遺伝子の解析ができるようになったことで、人類起源やその遷移コースの説明が飛躍的にしやすくなったことは非常に良かったのだが、問題点もある。
遺伝子の解析は20世紀末に、殆どが母系のmtDNAに対してから始められた。mtDNAから始められた理由は、当時まだ技術開発が十分でなく、mtDNAが他と比して解析しやすかったことと、一種の「母系神話」があったからでであった。
結果として、「日本人のルーツは数万年前のバイカル湖沿岸地域のある女性である。」との説がまるで定説で最も価値のあるかのように一時期さかんに喧伝された。
私は当時から、その説の極端さとそれをそのまま受け売りで主張する人々に驚嘆し彼らの正気の有無を疑った。
先ず地理的、気候的にみればアフリカを出た新人が北方ルートよりも南方ルートを通って日本列島にいた他方が多いと考えるのが常識で現在でも人口的にはそうだし、母系だけを言い、男系を全く無視しているのでは、女性と男性の社会における役割分担と歴史形成に及ぼす影響の大小を考えると、歴史記述には全く無効の説に過ぎないからであった。
最近では世界中の各民族でのY染色体系統分析が神速で進み民族のルーツ研究が盛んになっている。
ところがに日本では海外ほどにはY染色体の系統分析を用いた日本人のルーツ探しが行われていない。それどころか、古代では現代より更に社会での役割分担に男女の性差が大きかったにもかかわらず、Y染色体とmtDNAの系統解析の意義が、わざとかどうかは分からないがぼやかされて、まるで同じ課のように記述されている。
そこで、先ず、Y染色体とmtDNAの系統解析の意義を再確認しておかなければならない。
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